林業にデジタル技術を!現場と本社を経験した現役社員に林業の魅力を聞いてみた

インタビュー記事 コラム

01.林業にデジタル技術を!現場と本社を経験した現役社員に林業の魅力を聞いてみた

資本金90億円の大手企業に勤めているのは、今年で入社23年目のM氏。

土木作業や林業の現場管理の経験を経て、現在は本社のデジタル技術を推進する部門に属しています。

現場から本社へキャリアアップを進めるなかで、これまで携わった林業の仕事や現在の業務内容について詳しくうかがいました。

※2023年4月現在

人生を逆転させるために!高校を卒業して選んだ道は大手企業への入社

人生を逆転させるために!高校を卒業して選んだ道は大手企業への入社

M氏が現在の仕事に行きついたきっかけは何なのか。まずは、御社に入社する前の学生時代について振り返ってもらいました。

「学生時代は、親の勧めもあって地元の工業高校へ入学しました。
私は母子家庭で育ったので、高校に行かせてもらえるだけでありがたいなって。
母子家庭っていうだけでひどい扱いを受けてきたので『あぁ、自分の人生は落ち目だな』って、この頃は感じていました」

しかし、入学した高校で知名度の高い企業へ就職しているOBが多数いることを知り、一変したとのこと。

「知名度のある弊社に入れば、周りも認めてくれるだろうってめちゃくちゃ勉強を頑張りましたね」

その努力が実り、見事大手A社へ入社。「人生を逆転させたい!」その一心から、現在の会社への道を決めたのだとか。

林業を選んだのはたまたまだった?業務をとおして感じた心の変化

林業を選んだのはたまたまだった?業務をとおして感じた心の変化

M氏の勤務する会社は、電気といった技術系統や営業部門など、さまざまな部署で成り立っています。

その中でもM氏の所属する部署では、デジタル機器やドローン・AIなどのデジタル技術を駆使して現場での業務効率化・労力の軽減を図っています。

「人材不足解消にもつながるので、少しずつ推進していって効率化できればなと考えています」と語るとおり建設業界では人材不足が著しく、とくに若手の担い手不足が深刻です。

2002年に618万人いた就業者数も2019年には499万人まで減少(赤折れ線グラフ)

出典:国土交通省|国土交通白書 2020

M氏の勤める会社も例外ではなく、このままだと社員1人あたりの業務量は増える一方です。

「だからこそデジタル技術の普及が、急務である」と指摘します。

前述のとおり建設業界全体の人材不足が顕著ななか、なぜM氏は「林業」という道を選んだのでしょうか。
その理由について語ってくれました。

「最初は正直なところ、何でも良かったというのが本音でした。
入社して最初の配属先では土木作業員として従事していたのですが、肉体労働が合わないなと感じていたのです。
そのため、現場監督や管理側の仕事がしたくて部署異動の希望を出したら、その異動先がたまたま林業だったっていう感じです」

始めの頃は、肉体労働からの脱却がきっかけだったといいます。

しかし、少しずつ仕事を経験していく中で、心の変化があったようです。

「実際に作業員が伐採する現場を見て感動を覚えました。思った方向によく伐倒できるなって。
あとは、やっぱり景色が綺麗ですね。渓流釣りをするので、小川に魚が泳いでいるのを見ると幸せな気持ちになっていました」

趣味の渓流釣りで、美しいニジマスを釣ったときの写真

幼い頃から川釣りや自転車での山登りが好きだったM氏は、自然と林業の魅力に惹かれていったようです。

推進してきたデジタル化が各現場で活躍!そして嬉しかった上司の言葉・・・

推進してきたデジタル化が各現場で活躍!そして嬉しかった上司の言葉・・・

自然から離れて現在はデジタル技術といった最先端技術の業務がメインとなった今。
「覚えることがたくさんある」と話す一方で、過去の経験について語ります。

「2014年頃、それこそ前の職場のことですが、行政の方たちと関わったときにGISやGPSはすでに普及していました。
その頃の弊社はまだ導入すらしていなかったので、近代的な技術だなと驚きましたね。」

GISもGPSもデジタル技術のひとつです。

行政の職員が使用しているGISやGPS操作を見よう見まねで使ってみたり、ときには質問して現場で導入してみたり、その頃の苦労が今に活かされていると語ります。

「Googleアースに自社の用地境界が可視化できるデータを組み込み、iPadで見られるようにしました。
この取り組みによって、隣接する土地所有者との用地境界が明確になり、検査や伐採計画時などで役立ちます。
外注化するとお金がかかるので、とにかく勉強してトライ&エラーを繰り返しながら実現させた力作です」
※Googleアース:Google社が提供する衛星写真で構成された世界地図ソフトのこと。

この取り組みが、現場社員に大ヒット。

「出張で現場へ出向く機会があったときに、社員が積極的に使ってくれていて。
その姿を見てすごく嬉しかったことを覚えていますね」

そして、これらの実績がたたえられ、当時の直属の課長からこんな嬉しい言葉をいただいたそう。

「転勤前に『お前の仕事ぶりは申し分ない、もう言うことはない』と言われたときは、すごく嬉しかったですね。
厳しくて熱い人だっただけに、認めてもらえて嬉しかったです」

創造できる仕事だからこそ面白い!現職に向いている人の特徴

創造できる仕事だからこそ面白い!現職に向いている人の特徴

現在の計画や最新技術の推進といった業務は、どういった人材に向いているのでしょうか。

「向いていると思う人は、中長期にわたって計画を立てていく仕事なので、目の前ではなく先を見据えてビジョンを立てられる人ですね」

このように話すなかで、現在の業務に関して林業と類似した部分があると感じているそう。

「森林は木を植えてから1、2年じゃ成果が目に見えてこない。5年、10年経ってようやく明らかになっていく。
長期を見据えて業務を進めていくという意味では、森林の育成管理にすごく似ているなと思います」

また、もうひとつ向いている人の特徴についてこのように語ります。

「何もないところから生み出していく仕事なので、新しいアイデアを創造して自ら発信して提案できる人は向いているでしょうね」

与えられた仕事ではなく、ゼロイチを達成する仕事。
だからこそ挑戦できる人が向いている仕事であると話します。

林業は意外と女性に人気?魅力と課題について

林業は意外と女性に人気?魅力と課題について

建設業界では、女性が増えてきているように林業も例外ではありません。

新しい風として「林業女子」という言葉が浸透しつつあります。M氏はどのように感じているのでしょうか。

「公務員といった行政機関と協議をする場面では女性の職員を多くみかけるので、技術職の中でも林業は人気が高い職業なのかなと思います。
ちなみに弊社でも、技術職に関して約2019年頃から女性の採用を始めています。」

林業の中でも施工管理や行政機関といった、比較的肉体労働が少なく内業(事務所内での仕事)もある仕事に人気が高いと感じているそう。

一方で、林業従事者(現場作業員)となると「女性は大変なのでは?」と以下の懸念点を示しました。

  • 着替えの問題
  • トイレの問題
  • 肉体労働の問題

これらの課題を挙げたうえで、現場時代の頃を振り返ってくれました。

「山が好きだからと林業会社に勤めている女性がいましたね。多分今も働いているんじゃないかな。
元々は札幌市の出身で、山を求めて道東を巡り北見市にたどり着いたようですよ」

その女性作業員に「山の魅力って何?」と聞いたところ、やはり「自然が好きだから」と返ってきたそうです。

懸念点は残るものの、アウトドア女子にはまさにピッタリな職業といえるようです。

今後の将来とワークライフバランスについて

今後の将来とワークライフバランスについて

高卒で入社してから丸22年間、1社一筋を貫いてきたM氏に今後の展望についてうかがいました。

「この先は若手の時代になってくると思うんです。
私自身の体力の衰えもそうですが、スマホが当たり前の世代にデジタル知識も敵わなくなってくると思っています。
そのときに自分の強みを活用するためにも、プレイヤーでいることではなくマネジメントする側へシフトチェンジする必要があると感じました。
今後は、人材育成や経験を生かしたアドバイスができればと思っています。
現場の若い社員とコミュニケーション取るのも割と楽しいので(笑)」

現場社員へ林業に関わる測量の講習を行っているときの写真

今後は管理職へとキャリアアップし、さらに若手社員をサポートできる人材になりたいと自身の目標を掲げます。

2024年4月から現場の管理職が決まったようです。

一方で、プライベートはどうなのでしょうか。

「家も買って子どもを塾に通わせたり週末は好きにお酒を飲めたりと、私の子ども時代から比べたら想像できないほどぜい沢な暮らしができています。
そのため、給与面に関しても満足しています。若いうちは給与が低いと言いますが、年齢と勤続年数が上がれば満足いく金額はもらえるようになってきます」

「給与が低いから」と早々とリタイアする若手も多いです。

しかし、勤続年数を重ねるごとに昇給額もアップし、年齢に応じた給与ももらえるようになるので、少しずつ充実した生活がしやすくなってくると語ります。

これから林業を目指す方へ

これから林業を目指す方へ

最後にこれから林業を目指したい方に向けて、一言いただきました。

「今はスマート林業という言葉が浸透しているように、肉体労働だけに頼らない作業方法が多くなってきています。
だからこそ『肉体労働は苦手だけど、林業に関わりたい』『最先端技術に触れてみたい』という方。
それこそゼロから何かを生み出すような仕事をしてみたいといった方には、ぜひ挑戦してほしいなと思いますね」

とはいえ、M氏が勤務する会社は林業専門の会社ではありません。
他社や他業種に例えると、どのような企業が当てはまるのでしょうか。

  • 林業コンサルタント会社
  • 国・地方自治体の林務担当
  • 行政機関から森林管理の委託を受けている会社

以上の3つは類似している仕事内容ではないかと話します。

林業とは一言で収められないほど、幅の広い仕事を経験している。

そして、今後も御社を支え続け飛躍していくことでしょう。

M氏から貴重なお話が聞けました。

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